いわゆる動く重障児の表現行動の把握と療育計画の検討
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概要
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(1)いわゆる多動児3名を対象として、行動の自然観察ならびに生理的レベルでの観察を行なった。(2)3名の子どもの施設入所から現在までに、諸能力ならびに行動には明らかに発達変化がみられた。それらは、基本的生活習慣・移動能力・精神言語発達のすべての領域であり、いわゆる多動児も発達していくことが明らかとなった。特に、移動能力の領域で著しい変化がみられ、アンバランスが増幅することがわかった。(3)排便・睡眠等の生理的レベルでは、子どものいわゆる多動行動は必要行動であることが推定された。(4)管理上の問題、抑制の対象となるものを一応「問題行動」として取りあげた。それらは、「夜間脱出」「盗食」「職員の仕事のじゃまをする」等であった。(5)いくらかの「問題行動」は、適当な刺激がないため歪みを生じ、固定し、悪循環を生じていると考えられる。(6)一定の療育計画にもとづき、個別的に、濃厚にせまることで「問題行動」を克服し、発達変容の力へと高めていくことが可能なものがあることを見い出した。(7)これら3名の事例のいわゆる多動児が、運動量の面からも、行動生起の原因の面からも全く個別的で独自のものであり、その指導方向も独自なものでなければならないことが認められた。(8)これら3名に対して、共通して、職員の働きかけ、個別指導の必要性が考えられた。(9)今後、職員が様々な障害をもつ重障児の行動を理解していく上で、本事例はいくつかの治療計画への手がかりを示唆するものと思われる。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1975-06-01
著者
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