「女の手仕事」としての布生産 : インドネシア,バリ島における手織物業をめぐって(<特集>「布と人類学」)
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概要
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これはインドネシア,バリで儀礼用の正装の一部として織られてきた紋織(ソンケッ)についての論文であるが,焦点を置くのは布そのものではない。この布の生産が一農村の経済を支えるまでに成長してきた過程とその背景,生産組織の変化を検討し,それが経済的社会的要因のみならず,既存のジェンダー観念や伝統的位階秩序とどのような関係を切り結んできたかを考察する。調査村における手織物業の著しい成長を支えたのは,農業部門の変化,インフラの整備,政府による手工芸品支援策に加えて,観光収入の増大により豊かになった都市人口からの需要拡大である。手織りは女の仕事であるという通念に守られる形で,村の女性たちはソンケッ生産の中核を担ってきた。しかし,家事・育児や儀礼関連の労働といった,収人別出活動以外の仕事にも追われる彼女たちは,常に時間の配分を気にかけ,同時に消費者に好まれる織柄の「流行」も意識しながら,一枚でも多くの布をできるだけ短時間で織り上げることをめざしている。このソンケッ生産の現状を考察する上で興味深いのは,一方でこれほど市場経済の中に組み込まれ,完全な商品として生産され,消費されている布であっても,他方では,依然として伝統的な暦や儀礼にしたがった禁忌事項を適用されたり,既存のジェンダー役割の制約を受けているということである。
- 2000-12-30
著者
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