日米自動車企業における知の創造マネジメント
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概要
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現代の企業経営において、無形資産としての知(ナレッジ)は、企業の競争優位の構築には欠かせないものとなっている。それゆえ、企業にとって顧客や組織メンバーの持つ情報、経験、知識を組織共有の知として活用することを始め、組織学習を通じて価値の高い知を新たに創出することは、重要な課題である。本研究の目的は、日米における自動車企業を調査対象にし、このような知の創造マネジメントのプロセスやイネーブリング・ファクターを明らかにすることである。そこで本稿では、ブランド価値向上と双方向の緊密な情報共有化の観点から先行研究のレビュー、インタビューおよびアンケート調査結果、仮説検証結果、企業事例について検討を行っている。仮説検証結果により、ブランド価値向上と双方向の緊密な情報共有化の展開が知の創造にどのような影響を与えるのかを明らかにした。また、組織学習による知の創造を高める上で、ブランド価値向上の取り組み(日本における自動車企業)と企業内における双方向の情報共有化(米国における自動車企業)がそれぞれ重要な課題であることが判明した。また、企業事例の検討では、ブランド価値の向上に対する工夫や、情報共有化への活用の実態を各社の置かれた事情に適合して展開されていることを明らかにした。製品ブランドやコーポレート・ブランドの価値を向上していくことは、企業組織の存在意義、アイデンティティやコミットメントの醸成に寄与する。このようなブランド価値の向上は、双方向の情報共有体制を構築することにより、より価値の高い充実したものに発展させていくことが可能となるのである。仮説検証および企業事例の検討を踏まえ、本研究から次のような点が指摘できる。企業は自社の価値観を明確化にし、組織メンバーが共有して各自の行動に反映させた時、企業活動に首尾一貫性を持たせることが重要となる。すなわち、企業目標、経営戦略、経営理念、組織構造、社員のコミットメントなどからなる有機的な関連性が欠けてしまった状態で、単なるベストプラクティスの導入を行うだけでは、本来の目指すべき知の創造にはつながらないのである。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2007-09-30
著者
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