語彙史・語構成史上の「よるごはん」
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
<夕食>を意味する「よるごはん」は、現在若年層を中心に使用される新語と見なされているが、その成立は少なくとも第二次大戦前後にまで遡ると見られる。当初は児童が用いる稚拙な印象の語であったため、文字資料に残されることが少なかったが、近年では夕食時間帯の遅延や朝食の欠食という食環境の変化に伴い、これが妥当な表現という意識が生じて使用が拡大し、新聞記事や国会発言および小学校教材等でも使用されるという、《気づかない新語》としての性格をも有するに至っている。「よるごはん」の成立要因としては、<夕食>時間帯表現における「よる」の使用があげられるが、さらにその遠因に、二食時代の「あさ」-「ゆう」の対応に「ひる」が加わった結果、「ひる」-「よる」という対応意識の生じたことが存すると考えられる。「よるごはん」の出現は、食事時間帯語彙に「よる」が加わった点で新しいものであるが、旧くは存在しなかった「よる」を前項要素とする複合語という点においても特筆すべき存在で、語彙史・語構成史の両面から注目すべき語と言える。
- 2007-10-01
著者
関連論文
- 語彙史・語構成史上の「よるごはん」
- カス型動詞の一展開--ワラカスの成立からワラケルの派生へ
- 「食感」の語誌 : 新語の定着とその要因
- 書記言語における新語の成立 : 「鬱胸」の場合(遠藤邦基教授古稀記念特集)
- どのような新語が定着しやすいか (特集:日本語の謎) -- (語彙)
- 「気づかない〜」という術語について : 新語研究の立場から
- 私が勧めるこの一冊(第23回)『日本語の語源』阪倉篤義【著】
- "けがる,けがす"と"よごる,よごす" : 文体差から意味差へ
- 『大漢和辞典』編纂資料としての『新撰支那時文辞典』
- 私の日本語学・語彙研究から (特集 日本語学とは何か)
- 語源説・民衆語源をどう扱うか (特集:日本語の謎) -- (語彙)
- 「カツゼツ(滑舌・活舌)」の語誌--近代の漢語受容と辞書
- 語彙(史的研究)(2002年・2003年における日本語学界の展望)
- 改編本系『類聚名義抄』所収の「凌」字訓「コハシ」について : 意の文献初出に関する問題(国語学会2002年度春季大会研究発表会発表要旨)
- 語義変化と漢字表記--「太平記」諸本の「コハシ」「ツヨシ」を手がかりとする考察
- 言語の規範意識と使用実態 : 副詞"全然"の「迷信」をめぐって(ブース発表,日本語学会2011年度秋季大会研究発表会発表要旨)
- 1. 趣旨(近代語研究の方法と資料,日本語学会2011年度秋季大会シンポジウム報告)
- 3. 発題語の討論(近代語研究の方法と資料,日本語学会2011年度秋季大会シンポジウム報告)
- 新野直哉著, 『現代日本語における進行中の変化の研究 -「誤用」「気づかない変化」を中心に-』, 2011年2月14日発行, ひつじ書房刊, A5判, 416ページ, 6,400円+税