西欧キリスト教史における「行と身体」の諸相(宗教における行と身体,<特集>第六十六回学術大会紀要)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は、西欧キリスト教史の中で「行」というべきものがどのように実践され、その際「身体」がどのように位置付けられてきたかを、おおきなパースペクティブで通覧することを目指す。まず「行(修行)」という発想自体が西欧のキリスト教では希薄なことを語彙の観点から指摘する。これは古代以来の西欧の人間観において心身二元論的発想が強固であることに基づくが、神の受肉の教義を核心に据えるキリスト教は人間が身体をもつことを肯定的に捉えていることを確認する。ついでおもに中世・近世の修道生活において「行」に相当する実践の諸相を概観する。その際、身体に対してこれを、(1)「否定的に評価し能動的に関わる」側面、(2)「肯定的に評価し能動的に関わる」側面、(3)「否定的に評価し受動的に関わる」側面、(4)「肯定的に評価し受動的に関わる」側面に操作的に区分し、それぞれについておもに近世初期スペインの修道者たちの実践を例に検討する。おわりに、従来あまり注目されてこなかった上記(4)の側面、すなわち修道者に内から感じられる身体性ではなく、他者から「見られるもの」としての身体性の意義について若干の展望を述べる。
- 日本宗教学会の論文
- 2008-03-30
著者
関連論文
- 中村弓子著, 『心身の合一-ベルクソン哲学からキリスト教へ-』, 東信堂, 二〇〇九年三月二〇日刊, 四六判, x+三六四頁, 三二〇〇円+税
- 近世スコラ学的神秘神学の成立 : カルメル会の場合(第二部会,第六十七回学術大会紀要)
- フランシスコ・デ・オスナの「内的潜心」論 : 「スペイン神秘主義」の土壌としての
- 特別報告およびシンポジウム (シンポジウム 制度と学知)
- 西欧キリスト教史における「行と身体」の諸相(宗教における行と身体,第六十六回学術大会紀要)
- フランシスコ・デ・オスーナの「内的潜心」論(第三部会,第六十五回学術大会紀要)
- 樫尾直樹編, 『スピリチュアリティを生きる-新しい絆を求めて-』, せりか書房, 二〇〇二年一〇月一五日刊, A5判, 二三二+iv頁, 二四〇〇円+税 / 伊藤雅之著, 『現代社会とスピリチュアリティ-現代人の宗教意識の社会学的探究-』, 溪水社, 二〇〇三年三月二〇日刊, A5判, x+一九二頁, 一八〇〇円+税 / 伊藤雅之・樫尾直樹・弓山達也編, 『スピリチュアリティの社会学-現代世界の宗教性の探求-』, 世界思想社, 二〇〇四年一一月二〇日刊, 四六判, xv+二八一+xxii頁, 一九〇〇円+
- 言葉によって神に近づく : ルイス・デ・レオン『キリストの御名』への序章
- ベルクソンの宗教哲学における神秘家の意義(第二部会)(第六十二回学術大会紀要)
- 書評 Amador Vega, Ramon Llull y el secreto de la vida
- 書評と紹介 土屋博著『教典になった宗教』
- 現前と不在--ミシェル・ド・セルトーの神秘主義研究
- 十字架のヨハネにおける"スコラ学"と"神秘主義"
- 「神秘主義の本質」への問いに向けて
- 書評と紹介 氣多雅子著『ニヒリズムの思索』
- 棚次正和著『宗教の根源--祈りの人間論序説』
- 甘美な接触--十字架のヨハネ『愛の生ける炎』における神秘的合一のイメ-ジ(3)
- 私の胸で恋人は目覚める--十字架のヨハネ『愛の生ける炎』における「神秘的合一」のイメ-ジ(5)
- 神のかげ--十字架のヨハネ『愛の生ける炎』における「神秘的合一」のイメ-ジ(4)
- 「宗教と寛容--異宗教・異文化間の対話に向けて」竹内整一,月本昭男編著
- 十字架のヨハネとプロティノスにおける絶対者との「接触」論 (特集 新プラトン主義と東洋思想)
- 教えの違い (特集 世界三大宗教 ここが違う--仏教・キリスト教 イスラーム)
- 書評 「宗教哲学」の場所--岩田文昭著『フランス・スピリチュアリスムの宗教哲学』の視座と射程
- 書評と紹介 岡部雄三著『ヤコブ・ベーメと神智学の展開』
- 死後の生--死生学における〈宗教の領分〉
- 壮士の風をうけて (特集 『他者の甦り』を読む)
- 吉満義彦の「近代日本カトリシズム」 (特集 近代日本と宗教学--学知をめぐるナラトロジー)
- 近世神秘神学の誕生--近世カルメル会学派の「神秘主義」と「スコラ学」
- インタビュー 神秘主義とは何か--鶴岡賀雄 (特集 神秘文学への誘い)
- 修道院で道元を読む--奥村一郎神父の仏教とキリスト教
- 岡部雄三著, 『ヤコブ・ベーメと神智学の展開』, 岩波書店, 二〇一〇年三月一八日刊, A5判, xiv+三四六+六頁, 七八〇〇円+税
- 著者の周辺 『十字架のヨハネ研究』鶴岡賀雄--「あとがき」に書かなかったこと
- 十字架のヨハネを超える!?--聖サムソンのヨハネ一瞥
- 魂の中心/神の中心--十字架のヨハネ『愛の生ける炎』における「神秘的合一」のイメ-ジ-2-
- を語る言葉--十字架のヨハネ『愛の生ける炎』における「神秘的合一」のイメ-ジ-1-
- CONFESSION DE PECHE
- 魂の受動性 : 十字架の聖ヨハネ『魂の暗夜』に於ける
- 「神学」としての「自伝」--アビラの聖テレジアの「自叙伝」について-続-
- 「神学」としての「自伝」--アビラの聖テレジアの「自叙伝」について
- 神秘思想におけると(十字架の聖ヨハネ,「カルメル山登攀」におけるとそれを破るもの-2-)
- ミゲル・デ・モリノス : 遅れてきた神秘家(続)