職場の胃潰瘍および十二指腸潰瘍のリスクファクター : 患者・対照研究による解析
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概要
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患者・対照研究により,ある化学工場の男子従業員(348人)の消化性潰瘍のリスクファクターを胃潰瘍および十二指腸潰瘍別に検討した.4年間の胃集団検診で発見された74人の消化性潰瘍(非活動性潰瘍を含む)を患者群とした.これに対し患者群のひとりひとりと性(全員男子),年齢(年齢差5歳以内),作業態様(直接,準直接,間接製造部門別)および職場階層(部課長,係長,作業長・班長,一般従業員別)が一致し,過去に消化性潰瘍の既往がなく胃集検の結果"正常"と判定されたこの工場の従業員を対照群とした.消化性潰瘍の診断は,16年間の経歴を有する専門医(1名)により上部消化管の集団X線撮影(5方向),透視,および内視鏡検査の3段階の方法で行なわれた.胃または十二指腸球部にニッシェ(ulcer crater)が認められた場合を活動性潰瘍,また瘢痕の場合を非活動性潰瘍とした.消化性潰瘍の広範なリスクファクターの中から喫煙,飲酒,食事,精神的ストレス,交代勤務,遺伝などの32因子を選び,患者群および対照群の合計148人に対する面接調査をもとに,それらの頻度を両群間で比較した.統計学的解析はMiettinen,McNemarらの方法を用いた.結果は以下のとおりであった.喫煙本数は活動性胃潰瘍群で有意に多かった(26±11本/日,対照群では10±9本/日,p<0.01).これに対し,2親等以内の潰瘍患者と食事時間の不規則者の割合が十二指腸潰瘍群(活動性および非活動性十二指腸潰瘍の和)で有意に高かった〔オッヅ比はおのおの14.0,∞(6/0);危険率はおのおのp<0.01,p<0.05〕.体重は非活動性胃十二指腸潰瘍群で有意に大きかった(p<0.05).職場および家庭での精神的ストレスの有意差は見いだされなかった.なお,飲酒者と自動車運転者の割合は胃潰瘍群で,また飲酒量は活動性十二指腸潰瘍で有意に低かった.以上より,働く人々の胃および十二指腸潰瘍を予防しその治癒促進をはかるためには,禁煙を中心とした行動因子のコントロールが重要であると考えられた.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 1985-07-20
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