日韓両地域の中新世木材化石相の相同性と異質性(日本植物分類学会第6回新潟大会公開シンポジウム講演記録「新生代の地球環境変遷と地域フロラの分化プロセス」)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
韓国・日本を含む北東アジアは第三紀の植物の進化研究にとってたいへん興味深い地域である.日本列島が第三紀にアジア大陸東縁部から分かれたことは近年のプレートテクトニクス研究から知られていることで,その意味で韓半島はかつて日本列島と極めて近接した位置にあったことになり,そのことは両地域のフロラの相同性をもたらしている.一方,日本列島が大陸から離れたあとはこの二つの地域で植物の進化はそれぞれ独立して起きておりそれがこの二つの地域の独自の植物相形成をもたらしたと考えることができる.我々が予備的に行った韓国産尚北道浦項市地域の第三紀中新世Janggi累層産の木材化石研究は既に知られている日本の中新世材化石群に極めてよく一致していた.多くの植物研究者は韓日両地域の現在の植物相が第三紀中新世に東海(日本海)を形成する地質運動が開始したころに基本的に形成されたと考えている.したがって,この時期のこの両地域の植物化石を研究することは東アジアの植物の進化を明らかにする上で極めて重要な課題といえる.日本では第三紀中新世の地層がよく発達し,その中に豊富な植物化石を含んでいることはよく知られている.特に北海道から本州南西部までの日本海側沿いの「グリーンタフ」地域では豊富な木材化石を産出し,そのことから日本では20世紀初頭から木材化石の研究がなされてきているが,それでも全容を解明するには至っていない.一方,韓国ではこの時代の木材化石の産出が知られておらず,研究は全くなされてこなかった.近年筆者らが慶尚北道浦項市の造成地及び採石場に分布する中新統の地層に木材化石が含まれているのを発見し,この研究に着手した.中国ではこの時代の材化石は未だほとんど研究されておらず,韓日両地域の同時代の植物化石を比較研究することは北東アジアにおける植物の進化を明らかにする上で極めて有意義であると考えられ,また,植物化石群の解析は日本海の形成で引き起こされたであろう気候変動,環境変動を解明する上でも貴重なデータを提供するものになることが十分期待できる.
- 2008-02-20
著者
関連論文
- モニタリングサイト1000森林・草原調査コアサイト・準コアサイトの毎木調査データの概要(学術情報)
- 下北半島周辺の海底林
- 日韓両地域の中新世木材化石相の相同性と異質性(日本植物分類学会第6回新潟大会公開シンポジウム講演記録「新生代の地球環境変遷と地域フロラの分化プロセス」)
- 木部内圧の操作によってケヤキの枝に引き起こされる二種類の直径変動
- ケヤキ苗木主軸の年・日・秒単位での直径変動
- 樹脂鋳型法による生きたケヤキ通道組織の検討
- 休眠期におけるケヤキ樹幹の直径変動-苗木と成木の比較検討-
- 休眠期から新葉展開期におけるケヤキ樹幹の直径変動
- ケヤキ樹幹における木部内圧変化と導管形成過程との関連性の検討
- 下北半島周辺の海底林