非行性の認定(IX)補遺(その2) : 非行予測から非行性のアセスメントへの接近
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概要
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この報告は、非行予測の研究から得られた知見を、可能な限り非行性の認定に役立てることを意図したものである。ところが、非行予測に関する研究活動は、グリュック夫妻およびストット、D. H.がこの分野で活躍した1950-60年代以降、急速に停滞してきている。なぜ、そのような急速な停滞が生じたのか。その問いに答えることが、この研究の差し当たっての課題である。 1930年代以降に発行された非行予測に関する文献、合計42編を収集する。紹介、概観および評論のみから構成された文献を除いたのち、残りの37編を、主として方法論の側面から詳細に分析する。主な分析の結果は、次のとおりである。 (1) 追跡調査を導入している研究は、13編、全体の35.1パーセントを占める。 (2) これらの13編のうち、最初の調査が就学前に行われたものは、4編(30.8パーセント)にすぎず、極めて低い値である。 (3) さらに、これらの4編のうち、予測因子として環境要因とパーソナリティ要因のいずれも取り込んだ研究は、1編(25.5パーセント)にとどまっている。非行予測に関する研究の利用価値から見れば、第一に、人生の早期において非行の可能性を予測する研究を企画することが、なによりも重要である。第二に、予測因子は、環境要因とパーソナリティ要因を共に包含していなければならない。第三に、この分野における研究の行き詰まりを打開するためには、非行の発現を就学前における環境、特に家庭環境、とパーソナリティの関数関係によって説明することができる作業仮説を、あらかじめ準備しておく必要がある。
- 2007-12-20
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