名古屋市川原神社境内の池における外来カメ類の増加と、その対策に地域コミュニティが果たした役割
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概要
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都市部にある愛知県名古屋市川原神社の境内の池でカメの捕獲調査をし、カメの種類相や生息状況を調べた。1985年には池の岸から2mの柄のたも網によりカメを捕獲し、2003年には排水された池の底に残されたほぼ全数のカメを集めた。1985年に捕獲された110個体のカメの内訳はニホンイシガメ76個体(69.1%)、クサガメ12個体(10.9%)、ミシシッピアカミミガメ21個体(19.1%)、ニホンイシガメとクサガメの交雑個体1個体(0.9%)であった。一方2003年に集められた574個体のカメには202個体(35.2%)のニホンイシガメ、109個体(19.0%)のクサガメ、254個体(44.3%)のミシシッピアカミミガメ、4個体(0.7%)のニホンイシガメとクサガメの交雑、そして2個体(0.3%)のスッポンが含まれていたほか、変わったカメとしてハナガメ2個体、セマルハコガメ1個体が見つかった。外来のカメであるミシシッピアカミミガメの増加は著しく、食物や日光浴、越冬、産卵などの場所などの生活にかかわる資源を巡る競合を通じて、在来のカメの生存を脅かすことが懸念される。ニホンイシガメは減少が著しく、しかもオスの個体数が著しく少なく、個体群が崩壊の危機にあるかも知れない。クサガメとスッポンはそれぞれペット、食用に利用される種で、本調査地の個体群にも在来の個体のほか、流通の結果放逐された外来の個体がいる可能性があり、在来の個体と交雑して個体群の遺伝子を汚染する危険がある。2003年の調査には次のような点で社会的意義が認められる。つまり地域コミュニティの地元市民がカメの収集作業に多数参加した。そして古くからの神聖な場所として在来の生物の生息場所として重要である一方、外来生物の放逐場所にもなりやすい神社という環境において、在来のカメの保護をどうするのか、外来のカメの扱いをどうするのかを研究者である著者とともに議論し、考察した。
著者
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