障害者と「アイデンティティ」 : ろう者を事例とする考察
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概要
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本稿では,マイノリティ・グループに属する障害者にとって,アイデンティティを主張する必然性とはなにか,それが近代以降の社会のあり方とどのように関連しているのかについて考察を試みている.まず,帰属のベースとなる「コミュニティ」概念の推移について整理し,さらにろう者を事例として,世代的な差異を背景としたアイデンティティ意識の変化に着目し考察を進めた.そして,ノーマライゼーションの進展が同時に,再帰性を特徴とする現代社会に障害者を組み込むこととなり,マイノリティとしてのアイデンティティがよりいっそう強く意識されてくる,という構図を明らかにした.今日,エリクソン自身が示唆したように,多様なパースペクティブ(アイデンティティ)の存在を認め合いつつ,「共通の基盤」を模索する活動が求められている.その舞台は,言語的転回(linguistic turn)の経験の後で改めて浮上する身体性・実体性のあるコミュニティにほかならないと考える.
- 2007-08-31
著者
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