東アジアの時代の社会経済システム : 西欧文明との比較を通して
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概要
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本稿では、東アジアの社会経済システムの現状と今後を、西欧文明との対比を軸にトータル・システムの観点から考察した。本稿で論じられたことの主要なポイントは以下の5点である。(1)東アジアの文化・文明は西欧の文化・文明と著しい対照をなすが、トータル・システムの観点から見るとき、東アジアの経済社会システムは大きく整合性を欠くものである。(2)西欧文明のなかでも、アングロ・サクソン型システムと大陸ヨーロッパ型システムの社会システムの違いがあり、持続可能で定常的なグローバル経済の到来によって、宗教改革と啓蒙思想の合成物であるアングロ・サクソン型から大陸ヨーロッパ型への転換という流れが現れている。(3)この転換の流れの底流には、近代思想の幕開けの起源となると同時に、今日の社会理論全般にみられる方法論上・認識論上の混乱・混迷の起源となった中世末期の「普遍論争」に端を発する自然法思想と実証主義的な考え方との対立がある。(4)アングロ・サクソン型から大陸ヨーロッパ型への転換は、存在と認識の関係の倒錯や存在と当為の分裂に対して取り組む姿勢の転換であり、歴史の流れが大きく変わり始めたことを意味している側面がある。(5)自己の文化的・宗教的基盤の点で対極にあるだけでなく、歴史の流れに逆行するモデルであるアングロ・サクソン型、とりわけアメリカ型のシステムを追求している東アジアの国々がトータル・システムとして安定するためには、社会から離床した経済システムを社会のなかに埋め戻すだけでなく、その社会を東アジア固有の社会である「世間」のなかに埋め戻すという二重の課題を抱えている、ということである。以上である。
著者
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