経済文明と制度的変容 : トータル・システムの危機
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概要
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本稿では、世界的な成長の時代に入った現在、人類は今後も成長を追求できるのか、あるいは、まったく異なる発想を必要とするのか、を「工業化」・「制度化」・「トータル・システム」を軸に考察した。本稿で論じられたことの主要なポイントは以下の7点である。(1)現在全世界的な成長の時代に突入しているが、すでに地球は持続可能なレベルを「行き過ぎ」ている。(2)工業革命・組織革命・情報革命による工業社会・組織社会・情報社会への転換の具体的プロセスは、「制度化」・「フォーマル化」・「システム化」のプロセスであり、それは社会的・文化的・歴史的基盤からの「経済の離陸」・「社会の離床」というトータル性の忘却・喪失の歴史である。その結果、(3)今日、経済が社会を規定する「経済社会システム」(経済文明の時代)となっている。そして(4)科学技術と近代の経済社会原理とが結びつき、部分合理性(目的合理性)が無制限に追求されることによる「行き過ぎ」が諸問題として顕在化している。したがって、(5)トータル性を再生するためには、倒錯した「経済社会システム」を本来の社会的・文化的・歴史的基盤に引き戻すこと(「着陸」・「着床」)が必要不可欠である。(6)それは、科学(技術)の部分合理性(目的合理性)ではなく学問の全体合理性(価値合理性)を取り戻すことである。(7)人類はいまオープン・システムからクローズド・システムへの転換期にあり、経済原則の大転換が求められている。従来の経済(成長経済)においてはフローの成長を追求するが、新たな経済(定常経済)においては、ストックの内容と維持に関心を向け、存在するものをトータルに評価し活かし切ることが重要になる。以上である。
- 関西大学の論文
- 2005-12-05
著者
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