タイトルに秘められたメッセージ : S.アンダスンの『おそらく女性が』一考察
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概要
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本稿では,『おそらく女性が』に描かれたアンダスンの人間観を探るため,工場で働く男女労働者と機械の関係に焦点を当て,彼の幸福観とはいかなるものであるのかを論究した。アンダスンが理想としたのは生命,自由そして幸福の追求が可能な世界である。この理想社会と対峙するのが機械による産業主義社会である。機械の元来の役割は人びとを過酷な労働から救済し,空想の時間を生みだし精神の健全性を保つことであった。だが,機械によって創出された機械文明は匠の技を競う機会を奪い,自尊心を喪失させ,男性労働者たちを精神的に不毛な人間へと変質させてしまった。一方,女性労働者たちは肉体的に非力であるがゆえに機械を巧みに操る術を覚え,社会進出に伴ってこれまで内に秘めていた力を表出することに成功する。女性たちは物質文明を享受して男性たちよりも精神の自由を謳歌するようになる。また,女性は生殖活動を通じて生命の誕生という幸福を追求できる存在でもある。このようにアンダスンは『おそらく女性が』において男女工場労働者を対比して描くことにより,産業主義の進展に伴い荒廃していくアメリカの精神世界の救済を女性に託したといえるのである。したがって,『おそらく女性が」というタイトルには,「おそらく女性が世界を救済する」という彼のメッセージが秘められていると結論づけることができよう。
著者
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