家畜のグラステタニー症発生と関連する牧草の有機酸組成に関する研究 : II.有機酸組成の草種間差異
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概要
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本邦の放牧草地において,広く分布しているケンタッキーブルーグラス,オーチャードグラス,ペレニアルライグラス,レッドトップおよびトールフエスクの5草種を供試し,少・多2段階の施肥水準を設け,年11〜13回の刈取りを実施して6年間維持してきた各単播草地について,1975年の4月25日に全区掃除刈後,施肥(少肥区にN,P_2O_5,K_2Oともに0.25kg/a,多肥区はその4倍)を行ってから,有機酸組成の変化を検討した。その結果,1)施肥後1回目の刈取時(5月10日)において,草種間に大きな差が認められた有機酸はMalic A.,Quinic A.とt-aconitic A.であり,とくに,t-aconitic A.はレッドトップにのみ特異的に多く含まれていた。しかし,citric A.の草種間差異は極めて小さかった。2)増肥効果はオーチャードグラスとペレニァルライグラスのMalic A.,ならびにレッドトップのt-aconitic A.の含量を顕著に高める形で認められたが,施肥2回目の刈取時(5月23日)には,その効果も著しく滅少した。3)春期における再生期間(4月25〜5月20日)の有機酸組成の経時変化をレッドトップ以外の草種について検討を行ったが,いずれの草種からもt-aconitic A.は検出されず,また,各草種とも,citric A.の含量は全期間を通して低く推移する傾向を示した。4)各草種の部位別有機酸組成について調査した結果,草種間に著しいちがいが認められたが,その中で,t-aconitic A.がレッドトップの葉身部にのみ多く含まれていることは特徴的であった。以上の結果より,有機酸組成の面からはレッドトップが重要な草種であることが指摘されたので,本草種とグラステタニー症発生との関連について,さらに検討する必要が認められた。
- 日本草地学会の論文
- 1980-01-31
著者
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