牧草の夏がれ発生機作に関する研究 : II.牧草の夏がれ発生に及ぼす養分吸収の影響
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概要
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寒地型牧草6草種を6年間にわたって,一応放牧条件を想定した刈取管理のもとで多・少肥の2段階の施肥処理を設けて栽培した。その結果について牧草の刈取部位中の多量要素含有率を,主として夏がれ現象の点から解析し,つぎの知見が得られた。1)各草種中の多量要素含有率の年次ならびに季節変化より,夏がれ発生と関係のある成分がN,P,CaおよびMgであることを知り,これら各成分の根系発達に及ぼす効果を考慮して,根系値を〔N/P×1/(Ca+Mg)〕(地上部の乾物中%比)と定義することができた。2)夏がれ発生と春期根系値との間には密接な関係が認められ,各草種とも,この根系値の増大は夏がれ発生を促進する方向に作用した。しかし,根系値の夏がれ発生に及ぼす影響の度合は草種によって異なり,その大きさは,ペルニアルライグラス>オーチャードグラス>トールフェスク>ケンタッキーブルーグラス>レッドトップの順に小さくなった。この傾向は各草種の夏がれ抵抗性の大きさにほぼ対応していた。3)N/Pと(Ca+Mg)の夏がれ発生に及ぼす要因別影響度合について検討した結果では,オーチャードグラス,ペレニアルライグラスはN過多あるいはP欠乏に弱く,土壌酸性化の影響がとくに大きくでるのはペレニアルライグラスであり,ついでトールフェスクに大きくでることが明らかになった。4)夏がれ発生と根系値および梅雨期雨量・夏期気温などの気象要因との間に各草種とも密接な関係が存在していた。この関係は同一草種で同様な気象条件でも,土壌条件の差異によって夏がれ発生の程度に差が生じることを意味した。また,これら根系値と気象要因の要因別影響度合は草種によって違いが認められるが,夏がれに弱いペレニアルライグラス,オーチャードグラスの夏期生育は気象・土壌の両条件によって極めて左右されやすく,他の草種ではこれら両要因の影響が比較的小さいことがわかった。以上の結果より,モンスーン地帯のフリンジに属し,火山灰土壌が多くを占めている本邦の条件下で,寒地型牧草地を永年維持しようとするならば,従来のN,K中心の追肥には問題があり,今後は気象条件に見合ったP,Ca,およびMgの追肥について再考する必要が認められた。
- 1977-10-31
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