クマイザサ型草地における物質代謝 : 第1報 物質同化に関する理論的分析
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概要
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本研究は北海道十勝国河東郡上中晃町字ナイタイの半自然的なクマイザサ型草地について,物質代謝に基礎をおき,群落の生長を一般的にモデル化し,それに基づいて,生長率,生産力,最高生産収穫期並びに生長解析の理論を明かにした。その結果の大要は次のとおりである。1.基本的には植物生長はROBERTSON (1907)の生長式に符合すると仮定した場合,その生長係数(k)および最大生長値(W)はそれぞれJENNYによる環境要因であるcl(気候),s(土壌),r(地勢),o(生物),t(時間)の関数であり,各器官別並びに種別の生長もそれぞれ異なっている。したがって,植物群落の一般的生長は,次式で表わされる。[numerical formula]ここで,wは植物群落の乾物量,pは各構成種,nは各構城種の個体数,iは各種の器官,aは積分常数,tは時間を表わす。2.植物細胞,器官,個体並びに群落において,それらの時間的増加を考える場合それは生長であり,物質の生合成産物の増大として考えると,それは物質生産を意味する。一方,各無機元素のレベルにおいて植物の物質代謝に着目する立場を取れば,それは物質同化を示すことになる。したがって,生長率,生産力および物質同化速度は時間で生長式を微分して得られる。3.刈取り後の生長が刈取り前の生長と同一経路で再生長するという仮定を設けた場合,年間における生長可能の全期間をT,刈取り時間をtとして,その全期間中数回刈取った生産量をY_tで表わすと,一般的には[numerical formula]の式で与えられる。ここでg'(t)は草地群落の生長式g(t)の生長率,生産力,物質同化速度を示す。植物の生長がROBERTSONの式で表わされる場合,Y_tが最大値を持つ時期を求めるには1+ae^<-kt>-akte^<-kt>=0の式からtを求めるとそれが最大生産を挙げ得べき収穫期である。この式は超越関数であるからNEWTONの方法やg'(t)が極大値を持つ曲線回帰であるので統計学的に有意性の高い二次式で最高収穫期を求めると最大生産力期の3/2倍の時期であることが理論的に帰結される。4.上幌町字ナイタイのクマイザサ型草地における純生産量は乾物でそれぞれ平方mあたり葉〜490,茎〜692,地上部〜1,1829であり,粗蛋白質の場合には葉〜50.52,茎〜17.30,地上部〜67.82gであった。また,葉面積指数(LAI)と生長率の間には有意な直線的相関関係は認められなかったが,生産量と葉面積指数の間には1%の危険率で極めて有意性のある正の相関関係が認められた。5.このクマイザサ型草地における最高生産収穫期を求めた結果,6月初旬生長が始まってから104〜107日目が,草地の持続性と,同時に粗蛋白質や有機成分並びに無機成分の高い含有量に結びつけて最も高い生産量を収穫することができる時期であることが確かめられた。
- 日本草地学会の論文
- 1973-04-25
著者
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