田中正造の政治倫理思想
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概要
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田中正造は周知のごとく足尾銅山の鉱毒から渡良瀬川沿岸の人々を救うために文字通り一身を賭した人である。その意味でかれこそ「いのちの倫理(人間の生命を最優先するあり方・生き方を人間のあるべきあり方・生き方と考える思想)」を実践した人といえる。本稿は、かれの政治倫理思想の特徴を、為政者倫理の要求、政治批判の根拠、根拠の根拠、政治倫理思想の構造の4点から概観したものである。第1章では、まず彼の政治と政治家の定義をそれぞれ「民衆を幸福にすること」「そのために献身する人間」としてうえで、彼が為政者の倫理である「民生の安定」と「正義の実践」を明治政府に要求したこと、第2章では、その要求できた根拠を仁政主義、天皇の権威、権利、立憲主義、人道上の理由などから述べ、第3章では、そのうちの民衆中心主義の根拠をさらに検討した後、第4章で、彼の政治倫理思想の構造を、その目的・方法・性質の特徴から論じた。とくに彼の行動が彼の倫理観によって支えられている点に注目した。なお、田中正造の研究は数多くあるが、その倫理思想に焦点をあてたものはなく、その意味で本論はユニークなものといえよう。