日本民衆倫理思想研究 : おとぎ話を材料として
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概要
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古い時代の日本民衆の倫理思想は、資料の極端な不足から知ることが不可能と考えられている。しかし中世の室町時代に編纂された「おとぎ話」には、日常時の日本民衆のさまざまな倫理思想が生き生きと再現されている。そこで私は、そのうちのふたつ、「浦島太郎」と「一寸法師」、それにそうしたおとぎ話(伝説)を題材にして創作された「夕鶴」と「ごんぎつね」の4つの話から、往時の日本民衆の倫理思想を取り出してみた。結局、「浦島太郎」と「夕鶴」からは、報恩の思想と約束遵守の思想のふたつが、また「一寸法師」からは、知恵、勇気、たくましさの重視という思想が、さらに、「ごんぎつね」からは、つぐないの必要という倫理思想が取り出された。換言すると、日本人は困っている人を助けるべき、良いことをした人には良い報いがあると考え、またやさしい人、責任感のある人、正直なはたらきものを良しとしたと考えられる。これらの徳目は外国でも妥当すると思われるので、他国にも共通する普遍的な比較民衆倫理思想研究が可能になるだろう。