ヘルシンキ宣言第30条の注記または改訂案と日本における「臨床研究に関する倫理指針」
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概要
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世界医師会によるヘルシンキ宣言の30条は、臨床研究の終了時に参加した患者はその研究によって最善と証明された予防・診断・治療方法へのアクセスを保障されなければならない、という重要な倫理原則を条文化したものである。この条文は、先進国が出資・主導し開発途上国で実施された臨床試験をめぐる論争を受けて、宣言の2000年改訂に向けての論争の結果新たに入ったものである。しかし、世界医師会の小作業部会は、30条を改訂するかまたは注記を設ける形でこの原則を覆そうとしている。日本では、人を対象とする医学研究全般についての法的規制が存在せず、臨床研究についての行政指針が2003年7月に告示された。しかし指針には30条に似た文脈の規律は入れられたが、指針作成プロセスでは30条の原則についてはほとんど議論がなされなかった。日本では、アジアでの臨床試験のコストが安価であるために、日本の製薬企業がアジア諸国で実施する試験が増加しつつある。また、行政の方針を受けて、小規模な診療所での「医師主導治験」も始動しつつある。このような状況において、臨床研究をめぐる国際的論争の内容について学ぶことが重要である。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2004-09-17
著者
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