ヘルシンキ宣言第29条の注記と日本における臨床研究の指針
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概要
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世界医師会によるヘルシンキ宣言第29条は、医学研究の被験者はいずれも公平に最善とされる治療法を提供されなければならないという研究倫理の原則を表現しており、29条後半では最善と証明された方法が存在しない場合のプラシーボもしくは無治療との比較対照試験を許容している。この条文は宣言の2000年改訂に向けて国際的論争を喚起したが、採択された条文では29条の理念がほぼ維持された。しかし2000年版採択後も議論が続き、29条について研究倫理の理念を覆す「注記」が2002年世界医師会総会で承認された。一方、被験者を保護する包括的な法制度のない日本において「臨床研究の指針」が2003年春告示されるが、上述のような論争について十分な議論はなされていない。「国家戦略」として医学研究が推進される現況に照らし、歴史的考察を踏まえ公共政策的な生命倫理学の観点からプラシーボ対照許容範囲についての意思決定が求められる。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2003-09-18
著者
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