高齢者の情緒的一体感に関する研究 : 親密性を基に生起する関係と親密性によらない関係とは
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概要
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本研究は、親密性を基に起因する関係と親密性によらない関係とが、高齢者のwell-beingに対しておよぼしている影響を明らかにすることを目的としてなされた。調査は、東京駅を中心とする半径30kmに含まれる市区町村に居住する60〜79歳の男女800名を対象に郵送調査により実施された。有効回収数は721であり、そのうちの408名(男性200名、女性208名)を分析の対象とした。高齢者のwell-beingは日本語版GDSと、UCLA loneliness scaleを基にして新たに作成した孤独感尺度により測定した。分析は、抑うつ傾向および孤独感を従属変数とし、情緒的一体感の提供者数を独立変数とするモデルと、サポートの提供者数を独立変数とするモデルを用いて重回帰分析により行った。また、いずれのモデルについても、年齢、性別、配偶者の有無、健康度自己評価、同居家族数、就学年数を独立変数に加え、その影響をコントロールした。その結果、情緒的一体感の提供者(家族・親族、近隣・友人)数およびサポートの授受がある近隣・友人数と抑うつ傾向および孤独感との関連は統計的有意水準に達していた。それに対して、サポートの授受がある家族・親戚数と抑うつ傾向および孤独感との関連は統計的有意水準に達していなかった。これらの結果から、高齢者のwell-beingにとっては、親密性を基に起因する関係を多く形成・維持していくことが必要となっていることが示唆された。
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