線型計画法の北海道農業への導入と適用

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1)北海道の地域は広大で,地区により自然的・経済的・社会的条件が異なる。そして人口の増加,産業構造の変化,交通機関の発達,道路網の浸透,新しい地方市場の形成と生長,技術の発達など外部的諸条件の急激な変化は北海道における農業経営形態を絶えず変貌させ,その立地配置を流動させつつある。北海道農業の現在の姿は多年にわたるジグザグな試行錯誤の結果によって生成されてきたものであり,淘汰の法則の冷酷な作用は農家に多大の犠牲を払わせて来た。この犠牲を最少ならしめるため,また農業政策の経済効率を高めるため,各地区ごとに最適営農類型を設定する試みが戦前からなされているが,機能的な方法論を欠くため,有効な成果を収めるのが困難であった。2)1958年と1959年の夏,北海道大学にFarm Management Research Training Instituteが開設され,アメリカ第1線農業経済学者が多数招かれ,わが国の若い研究者に新しい経営分析理論を伝えた。これは方法論的に行きづまっていたわが国の農業経営学界に新風を吹きこむことになる。3)1959年春から帯広畜産大学の研究グループは北大の若い研究者と協力して線型計画法(LP)の適用に関する実験を開始し,資料の蒐集と処理の方法,単体表の組み方について北海道農業に適合する方式を作り上げ,1961年までに約650の経営計画を全道各地において試算・公表した。これらの経験を通じて,LPは経営計画の方法として甚だ有効なものであることが認められたので1959年から1963年まで毎夏,主として農協職員を対象とする線型計画法研修会を開催した。その結果,実際の経営設計作業は各地区農協連が自主的に実施し,大学の研究者がそのような実際的活動を行なう必要はなくなった。4)帯広畜産大学の経営研究グループの研究活動は個別計画から地域計画の問題に重点が移ったが,他方においてLPの利用について多角的に新手法を開発し実際への適用の幅を拡大した。たとえば面積不定計画・価格不定計画は適正規模,適正価格などの農政問題を分析するため有効な用具となることが確かめられた。5)帯広畜産大学以外の機関におけるLP適用の試みは道内では,北大,農林省北海道農試でなされたものが若干あり,手法は帯広のものとやや異なる。道外においても各地の大学や試験場で多種多様な試みがなされているが農技研における研究が最も優れた結果を示している。6)LPにも欠陥があり非線型計画法(QP)およびリスク・プログラミング(RP)について実用化が試みられたが未だ広範に適用できる段階に至ってはいない。線型計画法を適用する研究は,代表的農家の事例分析に始まり,特定地域の集団指導を目的とした営農類型設計に移り,第3段階として個別設計とその積み上げによる地域設計への拡張に発展してきた。そのような研究段階をへて,現在われわれが当面している課題は次のようなものである。a)農業生産の技術過程を線型計画モデルに組み入れる場合の近似精度をたかめること,つまり,各種係数の吟味の問題b)線型計画による各種解の修正や選択の問題c)地域内設計と地域間設計の調和をはかる問題d)線型計画法の発展として,ゲーム理論的接近,確率過程論的接近,シミューレーションなどを適用する問題,などである。
帯広畜産大学の論文
1967-12-31

線型計画法の北海道農業への導入と適用

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