組織内血液型同種抗原の研究 : 第1報担癌膀胱非腫瘍部膀胱上皮における同種抗原の検索

概要

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膀胱癌例から得た216個の非腫瘍膀胱組織標本に対し,specific red cell adherence (SRCA)法により血液型物質(A,B型物質)の同定を行った.この際,SRCA検査の判定上陽性または陰性いずれにも該当しないものを中間型として,その染色パターンを基底層陽性型,基底層陰性型,斑状陽性型ならびに弱陽性型の4亜型に分類した.斑状陽性型がもっとも一般的なパターンであり,基底層陰性型は扁平上皮化生に特有な反応であった.主病巣である腫瘍のSRCA所見によって標本を陽性,中間型ならびに陰性の3群に分け,腫瘍周囲の膀胱上皮の血液型同種抗原の分布を調べた.その結果,病理組織学的に正常な上皮のSRCA陽性率は主病巣陽性群で97%,主病巣中間群で91%,主病巣陰性群で69%であった.同様に上皮過形成ではそれぞれ100%,77%,57%,上皮異形成では78%,50%,53%であった.これに対して非担癌患者の膀胱から得た正常上皮,増殖性膀胱炎,ならびにブルン細胞巣のSRCA反応はそれぞれ100%陽性,上皮過形成では,83%が陽性であった.一般に組織内血液型同種抗原の消失は脱抑制による細胞の機能異常を表現するとみなされている.従って上記の結果は担癌膀胱における非腫瘍部上皮でもすでに細胞の脱抑制が生じている場合があり,とくに主病巣である腫瘍のSRCA反応陰性の例にそのような上皮が多いことを示すものであった.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1985-07-20

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