政策危機と危機管理 : 英国Consensus Politics下の政策危機とサッチャー改革
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概要
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英国では1950年代以降、主にケインズ主義による総需要管理政策(財政・金融政策)と完全雇用追求、社会保障充実を基本政策とすることが、保守党・労働党を問わず、実質的な「政策の枠組み」となっていた。(Consensus Politics)しかし70年代石油危機を契機に、既に経済供給面に多くの構造問題を抱えていた英国ではスタグフレーションが亢進し、悲惨指数(インフレ+失業率)悪化、財政収支悪化、ストの頻発等に対する保守・労働党政権の政策が有効性を欠く中で、消費者の生活へのダメージが増大(78年、the Winter of discontent)する「政策危機」が進行していった。79年に成立したサッチャー政権は、深刻な政策危機から脱却するために、これまでのConsensus Politicsに囚われない、経済構造改革を断行した。改革は政策の有効性や効果において試行錯誤を含むものであった(当初目的未達成の政策や、効果が乏しい例も多かった)が、政策の一貫性と優先順位は明確であり、強力なリーダーシップにより長期にわたり国民の支持を取り付け、インフレ抑制、国営企業民営化や海外直接投資導入策、税制改革、労働組合政策、規制緩和(金融ビッグバン等)、行政改革(エージェンシー制の採用等)、成長軌道への復帰などに成果を挙げた。諸政策の実施面で、第一期(79〜83年)第二期(83〜87年)では、現実経済とのミスマッチは抑制されていたが、第二期後半から第三期(87〜90年)になると、通貨・金融政策の方向性に鮮明さを欠き、通貨ポンドのEMS加盟を巡る深刻な内部対立、87年以降の財政・金融緩和長期化に伴うインフレ再燃、経済のバブル化とその後の失速等、新たな問題が生じ、また改革の副作用ともいうべき、失業率の高止まりや所得格差拡大への対応は不十分な水準にとどまった。しかしながらサッチャー改革の「経済基本理念」はその後メージャー政権だけでなく、労働党ブレア政権にも「小さな効率的政府の追求の持続」、「伝統的な福祉依存からの脱却」などの理念として継承されている。
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