南九州におけるソルガムの生育障害に関する研究 : 1.土壌化学性及び土壌センチュウは障害発生の原因か
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概要
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鹿児島農試大隅支場で発生したソルガムの生育障害の原因を解明するために,生育障害の状況および障害発生と土壌化学性ならびに土壌センチュウとの関係について調査を行った。障害発生の特徴として,障害はソルガムだけに発生し,前作,後作のローズグラス,エンバクにはまったく発生しないこと,障害は圃場に均一にしかも一斉に発生すること,2番草で生育が回復すること等が観察された。これらは過去に報告された鹿児島県大隅半島および宮崎県南部地域で発生したソルガムの生育障害と症状が極めて類似していることから,同様の原因によるものと推察した。障害発生土壌と健全生育土壌の土壌化学性(pH,無機態窒素,育効態リン酸,交換性塩基等)を分析した結果,従来障害の原因と考えられていたpH,無機態窒素,有効態リン酸は,両土壌間に差が認められなかった。また,交換性塩基(石灰,苦土,加里)および鉄,可給態鋼等についても,両土壌間に差がみられないこと,リン酸,加里,ホウ素のいずれを施肥した場合でも障害が発生したこと,さらに茎葉成分分析の結果,マンガン,鉄,亜鉛,銅,ホウ素について,いずれも障害発生区が高い値を示したことなど,土壌養分の不足が障害の原因と考えられるような結果は得られなかった。障害発生区と健全生育区におけるソルガム栽培跡地の土壌センチュウを調査した結果,障害原因の1つと考えられていたネグサレセンチュウが両区から検出されたが,センチュウの種類と密度に両区間の差は見られなかった。また,障害発生区と障害発生土壌のクロールピクリン消毒区および健全生育区におけるソルガム栽培土壌中のセンチュウ密度を比較した結果,障害の発生程度とセンチュウ密度の間に,センチュウが障害発生の原因であることを示す関係は認められなかった。さらに障害発生区の土壌および障害根から抽出したセンチュウをソルガム播種時に土壌に接種したが,障害は発生しなかった。以上の結果からソルガムの生育障害の原因は,窒素,リン酸等の土壌養分欠乏やセンチュウの加害によるものではないと考えられた。また,障害土壌をクロールピクリン等で消毒することにより障害が軽減されること,ソルガム未作付の土壌では障害の発生が見られないことから,ソルガムの連作に起因する土壌病害である可能性が指摘された。
- 日本草地学会の論文
- 1994-07-30
著者
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小松 敏憲
北海道農業研究センター
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山方 誠
鹿児島県大島農業改良普及センター
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白山 竜次
鹿児島県農業試験場
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白山 竜次
鹿児島県沖永良郡農業改良普及センター
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小松 敏憲
鹿児島県農業試験場大隅支場
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山方 誠
鹿児島県農業試験場大隅支場
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