小児原発性VURにおける腎瘢痕進展例の検討

概要

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小児原発性VUR症例における腎実質scar進展例の臨床統計と,scar進展にかかわる問題点を検討した.1)頻度:過去約13年間に当科で治療が加えられた711名912腎を対象とした.scar進展は55名(7.7%),腎数では67腎(7.3%)に認められた.内訳はscar新生32名(4.5%)36腎,scar進行26名(3.7%)31腎であった.2)VUR grade:grade I〜IIにはscar進展例はなく,grade III 11腎(3.0%),grade IV 37腎(10.9%),grade V 17腎(16.5%)と,逆流程度が強くなるに従いscarが進展する頻度が増加していた.3)尿路感染症:高熱を伴う尿路感染症(UTI)の頻度を検討したところ,約半数が年2回以上と頻回にUTIに罹患していた.1名ではUTIの既往が全くみられなかった.4)膀胱機能検査成績:無抑制収縮やDSD,手術を要した尿道リング狭窄などを合併した,いわゆるhigh pressure bladderが約半数で検出された.5)scar進展の年齢,時期:scar新生の平均年齢は7歳11ヵ月,scar進行は8歳6ヵ月であった.逆流防止術後にscarが進展したのは6.6%(35/527腎),VUR自然消失群では2.0%(4/200腎)であった.6)腎機能障害:5名(9%)に腎機能障害がみられ,うち1名では高血圧を示していた.今回の結果から,scar進展を予防するための下部尿路の検索の重要性と必要ならば早期の逆流防止術の必要性を述べた.
1988-03-20