水腎症における腎エネルギー代謝 : ラット水腎症における基礎的研究
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概要
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水腎症という表現型の裏に存在するメカニズムと閉塞解除後そのひずみがどのように回復するかを解明するために,片側尿管閉塞による腎アデニン系ヌクレオタイドの変動を測定して検討した.ウイスター系ラットの一側尿管を結紮することによって水腎症を作成した.結紮前と結紮後6ヵ月まで,Nagata,Rasmussenらの方法よりアデニン系ヌクレオタイド(ATP,ADP,AMP)を測定すると同時に,Atkinsonの式よりエナジー・チャージを計算した.またその動的変化を観察するため,アデニン系ヌクレオタイドおよび無機燐(Pi)への放射性アイソトープ^<32>Pの取り込みを求めた.これらの燐酸エステルの動態は閉塞1〜6ヵ月後に閉塞を解除して同様に測定した.その結果,ATPレベルは結紮後1ヵ月で正常の約60%まで急速に減少し,その後次第に減少していった.ADP,AMPは徐々に減少を示した.Piおよびその比放射活性は増加を示した.結紮解除後のヌクレオタイドの回復は結紮1,2ヵ月群で早くから認められた.しかしそれ以上の結紮期間ではヌクレオタイドは元の値には戻れなかった.エナジー・チャージは尿管閉塞後と解除後で有意の変化は認められなかった.以上から,水腎症の進行とATPの減少度はよく相関すると思われた.そして尿管閉塞が3ヵ月以上ではATP産生系の完全回復は望めず,腎に不可逆性変化の起こる可能性が示唆された.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1988-03-20
著者
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