睡眠障害の社会生活に及ぼす影響(シンポジウム : 心身機能と睡眠障害,2006年,第47回日本心身医学会総会(東京))
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
多くの疫学研究により,睡眠障害が非常に頻度の高い疾患であることが明らかにされている.近年,睡眠障害の診断にあたって,睡眠の量や質だけでなく日中の生活機能障害が重視されており,その社会生活への悪影響を数量化した研究が散見される.本稿では,睡眠障害の中で頻度の高い不眠症および日常生活で経験することの多い睡眠不足が社会生活に及ぼす影響について概説した.不眠は,耐糖能障害や免疫機能低下など,系統的に身体機能に影響を及ぼすことがわかっている.また精神生理機能への影響も大きく,慢性不眠症者では一般人に比べて産業事故リスクが7倍と報告されている.不眠によって集中力・記憶・日常の仕事をやり遂げる能力・他人との関わりを楽しむ能力が低下し,QOL (quality of life)水準は悪化する.さらに,不眠はうつ病の前駆症状として考えられてきたが,近年うつ病発症リスクの有意な要因としても重要視されている.睡眠不足症候群は先進諸国ではかなり多く,無視できない睡眠障害の一つである.睡眠不足症候群での眠気水準は他の一般的な過眠性疾患と同水準であるが,運転事故既往者では眠気重症度が有意に高い.睡眠不足は,身体的,精神生理的機能に影響を及ぼし,睡眠の充足感が低いほど抑うつ得点が高くなることが示されている.睡眠障害に対しては,十分な治療を行うことにより症状が改善し,社会生活への悪影響も抑制される.国民のQOLを向上し健康な社会生活を送るために,睡眠障害の早期発見・早期治療と睡眠健康に関する啓発活動が今後必要である.
- 2007-09-01
著者
関連論文
- 日本語版 the Epworth Sleepiness Scale (JESS) : これまで使用されていた多くの「日本語版」との主な差異と改訂
- 短期ベッドレスト時における精神作業能力と自律神経活動 : 水平位と6度ヘッドダウンベッドレストの比較
- コンピューター・テストを用いて評価したベッドレスト2日目における認知機能(水平位と6度ヘッドダウンの比較)
- パーキンソン病の臨床 : 進行期の諸問題
- パーキンソン病における睡眠関連症状
- 睡眠障害の社会生活に及ぼす影響(シンポジウム : 心身機能と睡眠障害,2006年,第47回日本心身医学会総会(東京))
- 睡眠覚醒リズム障害とヒト period3 遺伝子多型との相関
- 司会のことば(シンポジウム : 心身機能と睡眠障害,2006年,第47回日本心身医学会総会(東京))
- 隠れた病気に注意 見逃しやすい不眠の原因を正しく捉えよう (特集 不眠への総合的アプローチ) -- (各論 不眠への効果的なアプローチ)
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群スクリーニングにおける在宅簡易型無呼吸計測装置の有用性について
- P3086 アンケートと簡易モニターを用いたSAS検診
- 睡眠障害
- レストレスレッグ症候群の臨床
- 身体疾患と睡眠障害
- パニック障害と睡眠生理機構
- 鑑別診断
- 睡眠時無呼吸症候群-職場における対策
- 高齢期に多い睡眠障害(高齢者の睡眠と覚醒,第21回生命情報科学シンポジウム)
- 運転免許保有者の居眠り運転に関連する要因についての検討
- 睡眠関連食行動障害
- 過眠症の診断と治療 : ナルコレプシーを中心に
- 客観的眠気評価法-反復睡眠潜時検査 (Multiple Sleep Latency Test : MSLT) と覚醒維持検査 (Maintenance of Wakefulness Test : MWT)
- Suggested Immobilization Test
- O1-3 不眠症患者に対する認知行動療法の効果(一般演題I)