「都名所図会」にみる京都近郊山村の名所性 : 近世京都から伝えられた山村観
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概要
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近世京都の名所を編集した『都名所図会』,『拾遺都名所図会』には,「都」という題名にもかかわらず,洛中の名所すなわち都市名所以外の奥山や山里も紹介されている。本研究では,近世の都市観・名所観のなかに山村が組み込まれていることに対して,すでに近世において京都近郊山村は注目すべき名所であって,都市文化とは異なる文化を備えた「山村」が意識されていたことを指摘した。さらに,史料中で里人とともに表現された奥山や山里の挿絵,和歌,文章をもとに名所性を考察した結果,大悲山,鞍馬,八瀬,大原の山村では,各々独特の地域性が強調表現されるとともに,林産物の生産・運搬風景など里人の活発さや伝統的で高度な技術に支えられた生産地という産業的視点と,風流なたたずまいやひなびた隠遁地という鑑賞的視点の二つの名所性が強調されていることがわかった。このように描かれた京都近郊山村の名所性は,近世の山村観の一端として各地に伝えられたということができる。
- 2003-05-16
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