能動的Cl^-ホメオスタシス仮説と実験的てんかん病態モデル
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「細胞内Cl^-濃度([Cl^-]_i)は従来考えられていたほど'静的'でなく、種々のCl^-トランスポーターの作用により能動的に変化し、抑制性神経伝達物質GABA(γ-aminobutyric acid)のシナプス後膜GABA_A受容体-Cl^-チャンネルを介する作用を抑制から興奮までダイナミックに変化させて神経回路の機能と形成に関わる」という新しい概念(能動的Cl^-ホメオスタシス仮説)を、実験的てんかん病態モデルで検証してきた。ラット海馬の急性実験では入力線維の高頻度刺激によるGABA_A受容体チャネルからの急激なCl^-流入が[Cl^-]_iの過剰な上昇を招き、その結果GABA作用が抑制から興奮へ逆転して、てんかん発作波様の後発射の引き金となった。慢性のキンドリングモデルでは、海馬や梨状葉皮質で取込型Cl^-トランスポーターのNKCClが有意に増加し、[Cl^-]_iが慢性的に上昇することが示唆された。一方、発達初期ではNKCClによって[Cl^-]_iが高く維持され、GABAがCl^-流出による脱分極で興奮性に作用して神経回路形成に関与するので、[Cl^-]_iの異常が皮質形成異常を誘発する可能性がある。ラットの限局性皮質形成異常モデルでのmicrogyrus形成過程で、NKCClの増加と排出型Cl^-トランスポーターKCC2の減少による[Cl^-]_i上昇と、GABAの抑制から興奮への変化が見られた。以上から、Cl^-ホメオスタシスの異常がてんかん発作の機能的な原因や増悪因子となったり、器質的なてんかん原性の成因とも関わる可能性がある。
- 日本てんかん学会の論文
- 2006-04-30
著者
関連論文
- O1-15 STXBP 1遺伝子変異による大田原症候群の臨床的特徴(遺伝・生化学,一般演題(口演),第42回日本てんかん学会)
- 唾液中メラトニン量はヒトの昼夜リズムの指標となる : 血中メラトニンとの比較
- スライスパッチクランプ法を用いた抗てんかん剤Vigabatrinの作用機序の検討(生理学・薬理学)
- F-3 スライスパッチクランプ法を用いた抗てんかん剤Vigabatrinの作用機序の検討
- 能動的Cl^-ホメオスタシス仮説と実験的てんかん病態モデル
- 外側膝状体のクロライドトランスポーターとクロライドホメオスタシス (特集 脳の深部を探る)
- 生理学者群像
- NS-4 大脳皮質形成異常の reelin 遺伝子の発現変化 : 手術摘出標本における検討
- 幼少時の麻酔暴露による脳障害と脳発達過程の興奮性GABA作用
- 脳低温療法の未来
- GABAの抑制と興奮の二面性