対抗資本主義が生まれるとき : スペイン・カタルーニャにおける地域通貨活動
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概要
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人類学が現代の交換現象を扱う場合の認識論的な問題を検討する。交換に関する議論で使用されてきた区分である「伝統経済/市場経済」図式が学説史的に批判された状況を認めつつも、そうした図式を生んだ力、認識を配置した「想像力」を問題とする。はじめに理論的課題を焦点化するために互酬論の陥った混乱についてサーリンズを軸に整理し、またシステム論との関連を前川の議論から展望する。この作業によって交換現象は複数の次元が錯綜して描かれてきたことを確認し、実践と解釈の対応関係をどのように問題化すべきなのかを探る。事例として検討するのはスペイン・カタルーニャ自治州における地域通貨活動である。地域通貨は近年目立って増加する交換のネットワークで、本稿はそれへの人類学的な対応という性格をもつ。考察の概要としては、交換行為の共有原理として参加者に承認される規範の次元、また個人によって交換が実践される段階、そしてその中から活動の解釈へと繋がる領域を考察する。とりわけ活動するメンバーによる「対抗資本主義」という発言に注目し、その生成のメカニズムをモデル化する。結論としては「対抗資本主義」という発言が交換の実践から直接的に構築されるのではなくて、「地域通貨」と「資本主義」の関係がイメージとして接合され、認識世界における「ポップアップ効果」と名づけた効果によって、「想像力」が顕在化する点を論ずる。
- 日本文化人類学会の論文
- 2004-03-31
著者
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