メディア人類学の射程(<特集>マスメディア・人類学・異文化表象)
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概要
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近年、英米系の社会・文化人類学では、「メディア」に対する関心が高まっており、メディア人類学と呼ばれる領域が確立しつつある。本稿の目的は、メディア概念の検討および英米系のメディア人類学の批判的検討を通じて、メディア人類学の射程を明らかにし、メディア人類学の再構想の見通しを示すことにある。II章では「メディア」概念の検討を行なう。ここではまず、メディア概念の外延と内包について論じた上で、メディア人類学が対象とするメディアを「マスメディア=印刷メディアおよび電子メディア」と仮説的に規定する。そして、竹内俊郎が提出する社会的コミュニケーションの類型を援用してメディア人類学の射程について論じる。III章では、2つのメディア人類学(メディア人類学I/メディア人類学II)の動向について批判的に検討する。ここではまず、1990年代を通じてメディア人類学Iが出現する過程でカルチュラル・スタディーズが強力な参照枠組になってきたこと、そして他方では、カルチュラル・スタディーズ以外のメディア研究が十分に参照されてこなかったことを指摘する。つぎに、1970年代に人類学的な知識・洞察を公衆(the public)と広く共有することを目的とするメディア人類学IIが現れていたこと、そしてメディア人類学IIの議論のなかで、メディア人類学Iとメディア人類学IIを包括する、いわば「総合メディア人類学」の構想が提示されていたことに注目する。この構想は、メディア人類学Iとメディア人類学IIを連関させる視座を欠いているものの、人類学的なメディア研究の1つの方向性を示唆すると筆者は考える。IV章では、以上の議論と、近年の日本の人類学におけるマスメディアに対する問題関心の広がりをふまえて、「人類学と社会とマスメディアの関係を明らかにし、批判的に検討し、再構築するプロジェクト」としてのメディア人類学の構想を提示する。
- 日本文化人類学会の論文
- 2004-06-30
著者
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