海外生産拠点における組織能力の構築と環境変化
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概要
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多国籍企業を取り巻く状況は大きく変化し、海外生産拠点には国際競争力強化が求められつつある。海外生産拠点での国際競争力強化とそれに向けた「もの造りの組織能力」の構築は、生産規模などによる「戦略的な重要性」によってのみ規定されるとするのが、従来の定説であった。確かに危機に直面したトヨタの発展途上国における生産拠点、例えばタイ、豪州などでは、危機前は「戦略的な重要性」が低く親会社からの技術移転が限定的だったためか、確かになかなか「もの造りの組織能力」の強化は進まなかった。しかし、危機に直面した結果、トルコでは生き残りをかけて輸出開始という創発的な戦略対応を採った。現地市場向けよりもはるかに高い品質水準の達成が要求され、これが結果的には「もの造りの組織能力」構築の起爆剤となった。そして、トヨタの「進化能力」による後押しも受けながら懸命に取り組みを行った結果、飛躍的に「もの造りの組織能力」の能力構築が進んで品質水準を向上させ、ついには先進国の生産拠点を凌駕するレベルに達した。環境変化と組織能力の構築、国際競争力の向上がここでダイナミックにつなかった。つまり、トルコの生産拠点における組織能力の構築を促す上で利いたのはトヨタの「進化能力」であり、危機の克服を図ろうとする強い意思だった。本社に「進化能力」があってかつ危機に直面した多国籍企業の海外生産拠点の国際競争力は、まさに本社の「進化能力」、海外拠点の直面した危機、そして創発的に行われる本社の技術支援及び現地での能力構築への努力の関数である。ここでは、海外生産拠点の目際競争力に関し、2つのダイナミックな因果関係があった。第一に、本社の「進化能力」が、危機が媒介する格好で海外生産拠点の「ルーチン的なもの造り能力」を向上させ、それがその海外生産拠点の国際競争力強化につながった。第二に、危機を契機に現地市揚が縮小して輸出の必要性につながり、それが海外生産拠点への市場要求を高度化させて「ルーチン的なもの造り能力」の向上を迫り、国際競争力強化につながった。
- 2006-09-30
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