動物肺移植モデルを用いた肺除神経の生理学的研究

概要

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肺移植は,終末期肺疾患に対する究極的な外科的治療方法である。この治療方法では,レシピエント側の本来の肺が完全に摘除され,ドナー肺に入れ替わる。肺静脈,肺動脈,気管支の吻合は行われるが,神経系の吻合はまったく行わない。したがって,移植肺の神経系は,中枢との連続性を完全に遮断される。このような状態は,基礎医学の立場からは,肺の除神経の究極モデルであり,肺の自律神経機能解明に重要な役割を果たしてきた。また,臨床医学の立場からは,これら基礎研究の結果は,肺移植後のレシピエントの術後管理において,有益であると考えられる。これまで,肺移植の動物実験モデルを用いて除神経が,1)Pulmoanry chemoreflexに及ぼす影響に関する解析,2)気道径制御機能に及ぼす影響に関する解析,3)肺移植後の肺水腫発生に関与するメカニズムの解析が行われてきた。本総説では,これら研究結果に関して概説する。現在,臨床の肺移植では,移植術後早期の肺水腫,さらに遠隔期における閉塞性細気管支炎が予後に大きく影響を及ぼしている。これら二つの病態に関して,除神経が関与する可能性も指摘されており,今後,除神経の及ぼす影響に関する研究の展開が期待されている。
金沢医科大学の論文