「家屋もしくは邸館」:ルネサンス期フィレンツェにおけるパラッツォの社会的機能と意義
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概要
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ジョヴァンニ・ルチェッラーイは有名な『雑記帳』の中で、「人の一生で一番重要なことはふたつある。第一は子を産むこと。そして第二は家を建てること」と記している。この言葉はルネサンスの有力者たちが自分たちの邸館に期待していた社会的な重要性について明らかにしている。本稿では、このテーマ、すなわちルネサンス期フィレンツェの パラッツォが持つ社会的機能と意義について概観を試みる。この目的のため、ゴールドスウェイト、F・W・ケント、プレイヤーらの主要な研究に沿いつつ、とりわけこのような活発な建設事業を許した、あるいは推進した倫理的基盤について、そして中世のコンソルテリーア解体後にルネサンス社会が被った、社会や家族の絆の劇的な変動の影響について検討する。社会的変動の影響については、とりわけゴールドスウェイトの仮説に関わる論争についての検証を試みる。すなわち、巨大な規模と豊かな装飾をもつルネサンスのパラッツォは、本当に「施主とその核家族のためのプライヴェートな隠れ家」なのか、それともケントが考えるように、「隣人、友人、親戚」、つまりクリエンテーラの政治的・社会的中核なのか、という論議である。パラッツォの建築的特徴と同時代の史料の検討から、ケント説の妥当性を認めることができる。さらに、パラッツォの大きさや芸術的性格は、中世のコンソルテリーアの基盤となっていた血縁と共住による物理的な絆の代替となって、個人間の関係として成立した新たな社会的ネットワークを表象する、象徴的な価値となっていたと考えられるのである。
- 2007-03-01
著者
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