乳児の硬膜下液貯留状態に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
乳児期には,硬膜下の脳表に液体が貯留した状態を認めることがあるが,その内容については一定の見解が得られていない。画像診断・髄液循環動態の検査・手術結果などの分析からこの病態を検討し,考察を加えた。対象は,CTで低吸収域を示す液体が,硬膜下の脳表に5mm以上の厚さで貯留した33例の乳児(平均年齢6.2カ月)で,周産期異常・奇形・髄膜炎などに伴う液貯留例は除外した。これらの症例について,CT脳槽撮影による髄液の循環動態・経過中の脳室の大きさの変化・一部の症例ではMRI所見を総合的に分析した。臨床的に頭蓋内圧の亢進が強く疑われた18症例には貯留液排除の目的で手術治療を行ない,最終的な予後およびCT上の所見は6カ月から6年(平均2.1年)後に判定した。その結果,乳児期の脳表の液貯留状態は硬膜下・くも膜下の両腔の液が関与し合い進展する病態であると考えられた。これらには,くも膜下腔主体の外水頭症から,硬膜下腔主体の硬膜下水腫まで包括されるが,CT所見だけからでは鑑別ができない。そしていずれも髄液の循環障害を基に発生,変化する病態である。髄液循環障害の診断・貯留した液体と髄液腔との関係を把握するために,CT脳槽撮影・MRIが不可欠であり,両者の混在や,移行型が存在することから,extracerebral fluid collectionの呼称がふさわしい。成長とともに吸収されて消夫する例もあり予後良好と思われているが,頭蓋内圧亢進症状を持つ例には積極的な治療が望ましい。治療としては,硬膜下腔の液貯留には硬膜下腔-腹腔短絡術が,くも膜下腔主体の液貯留を示す外水頭症では脳室-腹腔短絡術が有効である。
- 1992-10-01
著者
関連論文
- 鞍上部くも膜嚢胞および第3脳室内嚢胞の診断と治療について
- 静脈奇形に起因した脊髄硬膜外血腫の1乳児例
- 新生児の仙尾部 Hemangiopericytoma の1例
- 脊髄脂肪腫の自然歴と手術適応に関する前方視的多施設共同調査 : Japan COE-SB Top 7 Study の調査開始報告
- 脊髄髄膜瘤にかかわる諸問題
- 3歳以降に有症化した脊髄脂肪腫の特徴 : 脊髄脂肪腫の自然歴と治療に関する前方視的多施設共同調査より
- 幼児期の二分脊椎患者に認める高次脳機能障害について
- 晩期発症型脊髄脂肪腫の特徴 : 脊髄脂肪腫の自然歴と治療に関する前方視的多施設共同調査より
- 脊髄脂肪腫の自然歴と治療方針に関する前方視的多施設共同調査 : 2006-2007年度登録症例の経過報告
- 年長期, 青年期を迎える二分脊椎症例の治療と患者支援
- 14. 「心因性」疾患を疑われ受診した悪性腫瘍の3例(第829回千葉医学会例会・第8回千葉精神科集談会)
- 二分脊椎に伴う脊髄脂肪腫の自然暦と手術適応に関する前方視的多施設共同調査 : "COE-SB Top 7 Japan" Prospective Cooperative Study : 2001年-2005年261症例の後方視的分析に基づく前方視的研究計画とその共有インフォームドコンセントの完成
- 水頭症を合併した脊髄髄膜瘤患者の神経心理発達
- 59. 硬膜外腔浸潤をきたした新生児仙尾部血管周皮腫の1例(第30回日本小児外科学会関東甲信越地方会)
- 序論
- 小児に対するガンマナイフ治療 : 全身麻酔下での安全性の確立
- 済州島での第19回韓国小児神経外科学会(KSPN)に参加して : 小児神経外科領域での日韓交流
- 二分脊椎患者に認める高次脳機能障害の早期発見に向けて
- 二分脊椎総合診療体制の構築に向けて : 現状と今後の課題
- 脊髄披裂治療後の神経心理発達上の問題点 : 二分脊椎診療における教育機関との連携の意義
- 二分脊椎患者にとっての望ましい長期外来管理と支援体制
- 2. 脊髄髄膜瘤に係わる諸問題(A5 小児脳神経外科の現状と今後の展望)
- 二分脊椎症における外来診療体制 : 現状と今後の二分脊椎外来のあり方
- 乳幼児期に施行されたシャント機能不全による視機能障害
- 後頸部髄膜瘤の1例
- 児童虐待による頭部外傷 : 小児病院での実態と対策
- 長期経過観察中に多彩な眼症状を呈した頭蓋咽頭腫の1例
- 髄芽腫 : 症例呈示
- 開放性脊髄髄膜瘤の初期治療における説明と受容
- 片眼性眼振により発症した視神経膠腫の1例
- 乳児の硬膜下液貯留状態に関する研究
- 二分脊椎の分類と臨床上の諸問題-COE-Spina Bifida Top 7 Japan の先方視的データからの解析- : PartI : EPSAC分類と Type 分類を用いた脊髄脂肪腫発生頻度と臨床上の特殊性の検討
- 周産期における諸問題(脳外科医の役割)
- 4.水頭症の各型と治療指針
- 第35回日本小児神経外科学会(木更津)を振り返って
- 小児専門病院CT実態調査(放射線防護分科会パネルディスカション「線量管理はできるのか?できないのか?」,第36回放射線防護分科会)
- 二分脊椎の臨床ガイドライン COE-Spinal-Lipoma Top 7 Japan ガイドライン2011 : Oxford エビデンスレベル : Level 2b (Grade II)
- 脊髄脂肪腫の自然歴と手術適応に関する多施設共同調査 : COE-SB Top 7 の結果報告