抽象的債務負担行為小論
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概要
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はじめに 抽象的法律行為の根拠と性質は古くから議論されてきた。本稿では、実体法的意味におけるの抽象的債務負担行為の実定法的根拠を明らかにするとともに、三角型取引における特殊な取扱の根拠を探求することにしたい。抽象行為を契約自由の原則に依拠して自由に当事者が作り出すことは可能であろうか。いいかえれば、法規が定義する抽象行為(手形(・小切手)行為)以外に、抽象的債務負担行為がありうるか。従来より、交互計算残高承認、債務約束などを抽象行為と見る見解があるが、近時、銀行振込に関する平成八年四月二六日の最高裁第二小法廷判決は、預金は振込依頼人と受取人との間の原因関係の存否にかかわらず成立するものという判断を示し、入金記帳を抽象的債務負担とする理論を示唆している。 また、七〇年代以降、国際取引に見られる、主として銀行を担保義務者とする付従性なき人的担保「請求払補償」の基本契約からの自律性(autonomie)を、「抽象性」(caractee abstrait)と呼ぶことの当否について、原因(cause)を法律行為の要素とする私法体系(フランス、ベルギーなど) で盛んに議論されている。このような状況のもとで、あらためて抽象的法律行為の実定法的根拠を探ることはあながち無意味ではあるまい。
- 山形大学の論文
- 1998-05-30
著者
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