喪失対象との継続的関係 : 形見の心的機能の検討を通して(<特集>対人関係の光と影-「絆」の形成、拒絶、そして崩壊の社会心理学的研究-)
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概要
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我々は人生の中で、愛する人や大切な所有物、慣れ親しんだ環境、身体の健康など、多くのものを失う。本研究では、これらの喪失の中でも最も重大な喪失、すなわち大切な人との死別や離別体験に焦点を当てた。そして1)死別・離別の後、喪失対象が残された者の心中にいかに内在化されているのか、2)形見は喪失悲嘆からの回復にいかなる影響を及ぼしているのかの2点について検討することを主目的とした。被調査者は、全国に在住の397名(男性169名、女性227名、不明1名)であり、郵送法によって質問紙調査を行った。主な結果は以下の通りである。1)内在化の程度を測定するために「侵入心像尺度」を作成し因子分析したところ、「消極的侵入心像」と「積極的侵入心像」の2つの下位概念が見出された。前者は「自分の意思とは無関係に形成された喪失対象の心像」、後者は「自ら積極的に形成した喪失対象の心像」として捉えることができる。2)男性に比べて女性の方が形見を保持している割合が有意に高く、また全体の半数近くの人がその理由として「失った対象のことを忘れたくないから」と答えていた。3)形見の心的機能についてパス解析により検討したところ、形見には残された者の心の支えとなる反面、回復を困難にするという逆機能が存在することが確かめられた。
- 2006-03-25
著者
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