森鴎外と朱子学
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概要
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森鴎外は我が国の近代文学者として代表的存在であり、しかも専門の医学だけでなく、諸学の分野においても優れた業績を残している。これらの諸学の根底として漢学の知識の大きいことはいうまでもない。鴎外の漢学の知識は、幼少から学んだ朱子学、成人して吸収した陽明学、さらに晩年には古学にも精通している。なかでも朱子学は、陽明学、古学に比して幼少から晩年まで作品に反映している。たとえば、論文「『しがらみ草紙』の本領を論ず」のような初期の作品、「智恵袋」や『妄想』などの壮年時代の作品、大正時代の史伝小説『渋江抽斎』、翌年の随筆「なかじきり」などには、朱子学の用語、朱子学との関わりなどが見られる。のみならず、青年時代に学んだドイツのハルトマンやショーペンハウエルの芸術思想や哲学思想などが鴎外の思想に影響しながら朱子学思想と絡んでいる。しかも『知恵袋』をはじめ、小倉在住時代の作品には、東西の思想の影響が顕著に見られる。そしてこのような状況が晩年の作品「なかじきり」などにまで続いている。本論では、鴎外の朱子学が幼少の時から晩年にかけていかに影響しているか、また他の儒学思想をはじめとする東洋思想、さらに西洋思想がいかに関わっているか、これらについて論述する。
著者
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