特別養護老人ホームにおける生活の質(QOL)の評価
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概要
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現在わが国では急速な高齢化社会に対応するために、社会福祉サービスの整備が急がれている。さらに、量的整備だけでなく、高齢者の生活の質の向上に向けたサービス内容の充実も課題となり、生活の質(QOL)の評価の必要性が増大している。しかし、生活の質は個別的なものであり、主観的な要素を多く含んでいるため、客観的に測定することは難しいとされてきた。生活の質の測定に関する先行的研究の一つに、1996年にMcMillanが開発したHQLI(Hospice Quality of Life Index:ホスピスにおける生活の質の指標)がある。今回我々はこのHQLIをもとに、わが国の老人福祉入所施設の調査に適合するように修正した生活の質についての独自の質問調査票を作成し(資料1) 、山口県内の2つの特別養護老人ホーム入所者の生活の質の評価を行い、検討した。その結果、入所者は、(1)経済的不安はあまり感じていない、(2)家族や友人からの援助に対して満足している、(3)宗教においても満足している、(4)毎日の生活に生き甲斐がないと感じている、(5)手を握ったり、肩を抱いたり、手足をさすったりする介護をあまり受けていない、(6)自分で楽しいと思う活動を行っていない、という客観的評価が得らた。これにより、人生の終末期を過ごすことになる特別養護老人ホームにおいて、入所者が生き甲斐をもって生活を送れるようにするためには、上記の評価に関わる援助の在り方が大きな課題であることが判明した。また、本研究では、QOLを客観的に評価するための指標が得られた。これらは今後の高齢者介護の方針策定に役立つと考えられ、入所者のQOLの個別的評価に基づき、個人個人に適合したQOLの向上をめざすきめ細かい施策がとれることが期待される。今後は、調査数を増やし、この独自のQOL質問調査票についての信頼度の確認及び在宅高齢者との比較検討が必要である。
- 九州女子大学・九州女子短期大学の論文