高齢化社会における老人介護サービスの地域特性とその背景
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概要
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近年の急激な社会変化の中で、地域の実態を反映し住民の生活環境に密着した社会福祉事業が行われるよう努力がなされつつある。しかし、その社会福祉事業の量や質において大きな市町村格差が生じているといわれて久しいが、その実態は不明な点が少なくない。従って今回保健福祉サービスの地域格差の実態を明らかにし、さらによってくる要因を明らかにするために、地域に特徴のある8都道府県を訪問し地域の実態を把握するとともに、保健福祉サービスの目標達成率とそれに関連する要因を検討した。調査の結果、次の事実が判明した。1.人口密度の低い北海道や島根県では特別養護老人ホームの目標達成率が高く、逆に人口密度の高い東京都ではホームヘルパー数の目標達成率が高い状況がみられるように、保健福祉サービス目標達成率と老年人口比率等の地域の実態との相関が認められた。2.経済力との相関は、多額の運営資金を必要とするホームヘルパー、特別養護老人ホーム、老人保健施設の目標達成率との間に認められた。3.高齢者の世帯の状況や住宅の種類との相関は、デイサービス、ショートステイ目標達成率との間でしか認められず、持ち家率の低い東京都において施設福祉サービスの目標達成率が低いなどの矛盾が見られた。4.健康水準を表す項目とはデイサービスの目標達成率を除いた他の保健福祉サービスの目標達成率との相関が認められた。以上の如く、地域の生活状況及び経済力、健康水準が福祉の達成度を決定する要因となっている。また、住民の生活状況つまり住民の必要性が福祉サービスに十分に反映されていない現状を明らかにした。
- 九州女子大学・九州女子短期大学の論文