地域調査の入門期指導に関する研究(その2) : 小学校社会科副読本に掲載された先人の事績の分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
社会科教員志望者向けに地域調査の指導力を育成する研究の一環として、地域調査入門期にあたる小学校中学年の社会科で使用される副読本の分析を行った。副読本の記載状況から指導の現状を推し量り、今後の指導資料を見出そうとする意図である。調査村象として、各副読本の間で扱いの幅が大きい「先人の事績」に注目し、次のような点を明らかにした。「先人の事績」に関する副読本の記載は説明的なものが一般的である。その理由は校外での現地学習ができないことを想定し、校内学習での便宜を図るためである。また内容面では、大半の小タイトル中に「郷土」の文言使用がみられること、地域の過去のインフラ整備の記載が主となっていることなどの傾向がみられた。この中で「郷土」という村落共同体的な意味を含む文言を用いることで地域そのものを注視させようとする意図や、全ての市町村においてもれなく小学生向けに「先人の事績」の適切な教材を選定することの難しさを垣間見ることができた。また、説明部分に比較して作業的な学習の具体的な事例の記載が少ないという傾向からは、体験的学習に資するという副読本の一つの性格は薄れぎみであることが明らかになった。これらから、指導者が副読本のみを教えるという姿勢をもつことなく、自ら現地を調査し、村象とする教材を改めて観察して指導の視点を定めることや、独自の作業課題を見出すなど、副読本を使った豊かな地域調査の学習を進めていくことの重要性を確認した。
- 2006-01-31
著者
関連論文
- 小・中学校社会科教育における観光資料の利用の試み : 京都府内の観光パンフレットに関する分析
- 地域調査の入門期指導に関する研究(その2) : 小学校社会科副読本に掲載された先人の事績の分析
- 新科目「教職総合演習」における指導の方向(その1) : -発表への相互評価を基にした考察-
- 社会科「教科教育法」における授業改善の試み(その3):教材研究としての地域調査
- 社会科「教科教育法」におかる授業改善の試み(その2) :学生の主体的な活動を重視した地域調査
- 社会科「教科教育法」における授業改善の試み(その1) : 社会科総論での「疑似ポスタ-セッション」の実践
- 離島地域の中学校における地域学習の現状(その2) : 沖縄県与那国町を事例として
- 離島における国際理解教育 : 長崎県対馬市立今里・鶏知中学校の事例
- 離島地域の中学校における地域学習の現状 : 長崎県対馬市を事例として
- 地域調査の入門期指導に関する研究 : 小学校社会科副読本に掲載された写真の分析
- 地震津波に備えた学校防災教育 : 和歌山県広川町の事例