減塩教育の可能性について : 塩分濃度差識別調査からの検討
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概要
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〔目的〕短期間の学習において、減塩という食育が成り立つかどうかを検討するため、本学学生を対象に、調理学実習I・IIの授業において塩分濃度差識別教育を行い、その結果を確認したので報告する。〔調査の条件と設定〕塩分濃度差識別能力を見る官能調査を実施するにあたり、試料温度を実際の調理で用いる温度である70℃付近に調整して実施した。〔調査対象および調査方法〕平成15年度の食物栄養学科1年に在籍した学生を対象に、訓練前の前期調理学実習Iの第1回目の授業と、訓練後にあたる後期調理学実習IIの授業の最終日に行った。調査は、塩分濃度0.5〜1.0%の範囲で濃度差0.1w/v-%に調整し、品温70℃±3℃に保持した試料をランダムに配置し、順位法による弁別試験と、その6試料の中から自分が最も好ましいと思う塩分濃度の試料を選ぶ選択法による嗜好濃度試験を実施した。〔結果および考察〕Kendallの一致性の係数W、Spearmanの順位相関係数γs、は、いずれも有意に高く、塩分識別能力が上がったことを示した。また、訓練の効果を見るコクランによるQ検定でも、学習効果があったことを示していた。しかし、選択法による嗜好濃度試験では、前期と後期では大きな差は見られなかった。これらの結果から、1年間の授業を通して行った減塩教育は、学生の塩分を知覚する能力を高める効果は認められたが、嗜好塩分濃度には大きな変化は見られず、文化的に手に入れた味覚は、1年間という学習期間では変化しない事を示していた。一方で、パネルは、前期より後期において塩分濃度を識別できるようになっていた。このことは、味覚識別能力の獲得は、訓練と環境によって可能である事を裏付ける結果となり、1年間という短期間の学習でも可能であることを示していた。塩分濃度差を識別する能力の獲得は、自らの食生活の中で塩分をコントロール出来る能力の獲得である。減塩を目的とし、塩分濃度を見分ける能力を培うとともに、意識的に料理の塩分を捉える習慣を持つことで、食生活の中での塩分摂取量をコントロール出来るものと考える。
- 2006-02-28
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