タバコ訴訟の動向と今後の法制的課題
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概要
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日本は,先進諸国の中で突出して喫煙率が高い「タバコ汚染国」であるが,その原因として,(1)多くのタバコ訴訟における裁判所の原告敗訴の判断のほか,その前提として,(2)タバコをめぐる行政的規制(喫煙規制)が際立って弱いことが指摘できる。タバコ訴訟において,裁判所は,原告の請求を棄却する法的根拠として,(1)受動喫煙の重大さの不承認,(2)喫煙の社会的承認,(3)受忍限度論,(4)建物構造上の困難,といった理由をあげているが,理解に苦しむものが少なくない。一方,喫煙者と非喫煙者の利害の対立構造や,喫煙の自由と嫌煙権との関係を踏まえれば,喫煙規制の強化は不可欠である。今後の喫煙規制のあり方を考察するに当たっては,(1)非喫煙者の被害を防止し,健康を保護するという視点から,「受動喫煙防止施策」を充実させることはもちろんであるが,(2)現在,未成年者による喫煙が顕著であり,未成年者を保護するという視点から,「未成年者の喫煙防止施策」も必要である。さらに,(3)喫煙者も「やめたいけれどもやめられない」という面があり,喫煙者の健康を保護するという視点から「喫煙者減少施策」も必要である。具体的な法制的課題をあげると,(1)「受動喫煙防止施策」の視点からは,(1)公共の場所・共有する生活空間における喫煙規制,(2)職場での禁煙規制,(3)歩行喫煙(歩きタバコ)規制などが考えられる。(2)「未成年者の喫煙防止施策」の視点からは,(1)学校における全面禁煙,(2)タバコの宣伝広告規制の強化,(3)ドラマ・映画における喫煙シーンの禁止,(4)タバコの自動販売機の全面禁止,(5)タバコ税の大幅値上げ,などが考えられる。(3)「喫煙者減少施策」の視点からは,(1)タバコの宣伝広告規制の強化,(2)ドラマ・映画における喫煙シーソの禁止,(3)タバコの自動販売棟の全面禁止,(4)タバコ税の大幅値上げのほか,(5)タバコの有害表示の義務化が考えられる。
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