Vibrio parahaemolyticusのviable but non-culturable状態の誘導及びその復帰の検討(西九州大学)
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概要
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本研究では,食中毒菌であるVibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)株が,低温,低栄養,低塩分の環境下で,生きているが培養できない(VNC)状態にどのように移行するか調べた。37℃で培養したV. parahaemolyticusの対数増殖期細胞を1.85%食塩水中に10^6CFUになるように調整し,10℃に保存した。その結果,培養可能菌数は3段階の減少変化を経ることがわかった。また,その過程における生菌数を計測したところ,ゆるやかにしかも2段階で減少したが,培養可能な菌がなくなった10日目でも,まだ5×10^4/mlの生菌が存在することが確認され,V. parahaemolyticusがVNC状態に陥っていることが明らかとなった。また,その過程で菌の形態は,桿菌から球形に変化していることが分かった。また,抗酸化物質(アスコルビン酸,アスコルビン酸ナトリム,プロトカテキュ酸エチル,BHA, BHT)やピルビン酸ナトリウムが,VNC状態からの回復作用があるか検討した。VNC処理開始後5,6日目の菌に抗酸化物質を添加しても回復作用は見られなかったが,1%ピルビン酸ナトリウムを添加したとき,5日目の菌では無添加培地の2.1倍,6日目の菌では無添加培地の5.6倍のコロニーが形成された。つまり,無添加培地では,実際の生菌の4.4%しか培養できないのに対して,1%ピルビン酸ナトリウムを添加したときには,実際の生菌の9.4%(5日目)及び31.3%(6日目)まで培養可能になっていた。今回の研究により,ピルビン酸ナトリウムにはVNC状態からの回復作用があることが示唆されたが,十分な回復作用ではないため,今後は,さらに回復作用のある物質の検索や培養方法の検討をする予定である。
- 2006-03-01
著者
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日野 まど香
西九州大学健康栄養学科
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木下 瑛莉
西九州大学健康栄養学科
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齋藤 洋子
西九州大学健康栄養学科
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安丸 昌代
西九州大学健康栄養学科
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米倉 久美子
西九州大学健康栄養学科
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波多野 昌二
西九州大学健康栄養学科
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日野 まど香
西九州大学健康福祉学部健康栄養学科
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