周年放牧肉用牛の季節繁殖の効果と問題点
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概要
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鹿大入来牧場の周年放牧和牛20頭を用いて, 昭和56年3月19日から昭和56年7月1日までの104日間, 改良草地と自然草地に放牧した牛について季節繁殖の可能性や問題点を比較検討した.得られた結果は次のとおりである.1.春季に改良草地放牧牛に濃厚飼料を1日当り3kg給与すると, 体重は急激に増加した.しかし, 自然草地では野草の再生量が少なく, 濃厚飼料を多給しても放牧牛の増体量は少なく, 濃厚飼料給与の効果はほとんどなかった.2.ヘマトクリット値および血清アルブミン濃度は改良草地放牧牛で高い値を示した.血清中のカルシウム, マグネシウム, ナトリウムおよびカリウム濃度は4月中旬から5月中旬にかけて高い値で推移したが, 両区間で有意差は認められなかった.しかし, カルシウムやマグネシウム濃度は正常値以下で推移することが多かった.また, 無機リン濃度は自然草地で濃厚飼料を多給した4月上旬に高い値を示した.3.卵巣は3月下旬では小さく, 硬く, 機能も停止状態のものが多かったが, とくに, 改良草地放牧牛では濃厚飼料給与によって回復し, 発情が回帰した.4.改良草地では分娩牛の発情回帰日数は91±33日, 受胎に要した日数は91±37日, 発情回帰率は100%, 受胎率は83%であった.一方, 空胎のまま越冬した牛の発情回帰率は100%であったが, 受胎率は25%と低かった.自然草地では分娩牛の発情回帰日数は131±64日, 受胎に要した日数は157±47日, 発情回帰率は100%, 受胎率は83%であった.また, 空胎のままで越冬した牛の発情回帰率は100%, 受胎率は50%であった.これらのことから, 改良草地を用いて季節繁殖を行う場合, 晩冬から早春に分娩した牛について, 濃厚飼料を3kg程度補給することによって良好な繁殖成績を得ることが可能であると思われた.しかし, 季節繁殖を行う場合においても, 越冬時に必要な栄養水準を維持するための飼養技術の開発が不可欠であると考えられる.
- 鹿児島大学の論文
- 1988-03-15
著者
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