暖地における畦間灌漑と水稲生育との関係 : I.畦間灌漑法の差異がIR8の生育に及ぼす影響
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概要
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水稲IR8の生育に及ぼす各種畦間灌漑法の影響を湛水灌漑と比較検討した.各処理区は100×100×30cmの木箱を用い, なかに畦幅20cm, 畦高15cm, 畦長100cmの畦を5列作成し畦間(下端)を10cmとした.灌漑処理法は第1表に示した通りである.得られた結果はつぎの通りである.1.移植後6週間以降, 畦間掛流し区の草丈および分けつ数は他の何れの処理区よりも大で, 穂数と1穂粒数の増大により区間で最大の収量を得た.とくに栄養生長量の増大は著しく, 出穂直前における株当り地上部重と緑葉葉面積は湛水区に対しおのおの2.5倍と3.5倍を示した.この特異的な後期優勢型の生育様相は好気的な畦立条件と掛流しによる低水温の複合的な効果と考えられる.2.畦間循環灌漑区は, 貯水槽との間の循環システムのために, 水, 地温が比較的高く保持されたことも影響されて, 掛流し区とは逆に移植後6週間までの初期の茎数増が顕著で, 同時に地上部重も大で穂数および1穂粒数の増加をみたが, その程度は畦間掛流し区には及ばなかった.ここで生育初期の高温条件に附随しやすい後期凋落型の生育を示さなかったことは, 畦立による好気的条件が影響したものとして注目された.3.畦間の水深や排水時間に差異を設定したその他の処理区は, 湛水区より分けつ数, 穂数および地上部重に若干の増加をみたが特筆するほどの差異ではなく, また相互の区間差も比較的小であった.4.以上のように, 水, 地温の変化を伴った畦立処理区に特異的な生育がみられたが, 出穂期の遅延による登熟歩合の著しい低下のために, 得られた栄養体の増大を収量に直結し得なかった.この点に関しては, 水管理以外の栽培方法の改良などにより克服してゆきたい問題と考える.
- 1976-03-20
著者
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アルボレダ ネブカドレザ
Laboratory Of Crop Science:(present Address) National Food And Agricultural Louncil
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植木 健至
Laboratory of Crop Science
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