創造的能力を伸ばす調理教材の構造について : 中学校技術・家庭科
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概要
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技術・家庭科における創造的能力の養成は,芸術的な創造活動と科学的な創造活動とによって育てられると思われるが,前者は年少者においてもその活動に入りやすく,後者は課題解決的な思考を行なえる年齢ではじめて可能な活動である。この課題解決的な思考過程における着想は,技術的思考力を育てることを重視した"場"を設定して訓練することによって養成されると思われる。しかし技術・家庭科における"場"の設定は,生徒の年齢と能力に応じた方法でなされなければならない。このような方法で訓練された時,理論的な課題解決のための着想は,技術的な思考力となって定着し,生活のいろいろな場面で生きた力となると思われる。この技術的な思考の流れの実状を,録画により,中学1年生の実習題材"さつまじる"の実習における外的行動を通して捕え,考察を試みた。それによると思考のつまづきが技術的な無効行動となって表われていることや,生徒自身が,各要素作業の中に課題性を発見し,その解決は経験的着想だけでは困難であり,解決のための理論的な情報が必要であることに気付いたこと等がわかった。このことから中学1年生の年齢の能力から考え<野菜等の煮える速さと変化>についての調理理論をとりあげ,これを各教材を結ぶ基本的な構造とし,"さつまじる"の中に設定したこの調理理論の発見学習の場が,"カレーじる""煮物"の実習の際に,どのように転移的な技術的能力となっていったかを,生徒の行動過程を通して記録調査した。これを行動過程評価表を用いて点数化し,事後に行なった思考能力調査のための質問紙によるテストの結果と比較考察した。以上の実験授業を通して次のことがわかった。(1)誘導型指導に比較し,発見型指導の方が,"場"の設定における生徒自身の課題性の発見がなされたこと。(2)第1回実習時における課題性の発見は第2回以後の教材との間の系統的構造化がなされていたので,2回目3回目の実習ヘと技術的な能力となって転移したこと。(3)実習に対する生徒の心情が高まり,野菜を美しく切ること等への芸術的創造活動がみられたこと,などである。中学校における調理教材は独立した献立中心の題材になっている。しかし中学生に相応した調理理論をいくつかの題材の中に構造的に組織し,その最初の授業を発見学習の場とすることにより,生徒自身がそれ以後の学習の中で共通点を発見し,技術的思考力によって課題を解決し,創造的知性を育てる力となると思われるのである。終わりに授業研究にご協力いただいた埼玉県川口市立十二月田中学校鈴木咲子先生に心から謝意を表する。
- 東京家政学院大学の論文
- 1978-05-01
著者
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