保育・子育て実践における「個の尊重」 : ジェンダーの視点から再考する(短期大学部 保育科)
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概要
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本研究は、ジェンダー・ステレオタイプの形成につながる行為が保育実践の場において観察されたことをもとに、保育・子育て環境の実態を定量的に把握し、慣習的に保育理念とし実践していると自認されてきた「個の尊重」について、ジェンダーの視点から再考することを目的とする。そのため、保育・子育て環境として重要な役割を担う保育所(園)の保育士と保護者各515名を対象に、理念としての「個の尊重」がどのように保育実践の中に実態化されているのかを明らかにするために、両者における保育理念と実践との相関ならびに保育実践とジェンダー意識との相関を見る質問紙調査を実施、分析した。結果として、以下のことが明らかになった。1)保育者が実践していると自認する「個の尊重」とは「男女の本質的性差の尊重」を前提とした保育実践である、2)男女の特性論がジュンダー・バイアスに基づく非対称的な概念であることへの認識が十分ではない、3)保育士・保護者が自らのジェンダー・バイアスに気づかないまま子どもにジェンダーを再生産している。これらの知見から、「個の尊重」という保育理念に基づく保育実践の自認と実態との間には大きな隔たりがあることが明らかになった。したがって、本調査は乳幼児の個性が真の意味において尊重され育まれるジェンダー・フリーな保育・子育て環境を形成するためには、どのような生活体験を子どもたちに提供することが望ましいのかを再検討する上で、示唆に富む基礎資料を提示しているといえる。
- 2006-02-28
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