保育・子育て実践に関する「参加型ワークショップ」を用いた : ジェンダー・バイアスへの「気づきプログラム」および「評価方法」
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概要
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筆者らの前回の研究において、保育現場で慣習的に自認されてきた保育・子育て実践における「個の尊重」とは、性別役割分業(ジェンダー)の尊重を前提とする「個の尊重」であることが明らかになった。このように保育・子育てに携わる者が性別役割分業を深く内面化し、保育・子育て環境がジェンダー・ブラインドな状況にあることは、「個の尊重」を実現するうえで妨げとなる。そこで、本研究においては、次世代育成にかかわるあらゆる立場の人が連携して「ジェンダーに敏感」になることが必要であるとの認識のもとに、ジェンダーへのとらわれに「気づき」を促す「参加型ワークショップ」を地域で展開していくことが有効であるとの仮説を立てた。それにもとづき、日常生活のなかにとけこみ「自然な風景」となっている場面を題材に用い、「参加型ワークショップ」を考案した。さらに、ワークショップ効果を確実なものとしていくため、先行研究がほとんどないなか、「評価方法」を考案した。参加型ワークショップと評価方法の考案に際しては、意識および行動の変革への動機づけは、「実感」と「理解」との両面が達成されてこそ可能であるとのコンセプトをベースにした。本研究で考案した参加型ワークショップを、K市内保育所2箇所、幼稚園1箇所、市民センター1箇所において、保育士、幼稚園教諭、保護者、子育て支援関係者延べ61人を対象に、5回実施した。その結果、(1)少人数グループで話し合うことの意義、(2)ワークショップの題材に、日常生活の身近な場面を取り上げイラストにしたものを用いることの効果、(3)「実感」と「理解」の両面から「気づき」を促すことの効果が明らかになった。さらに、今後の課題としては、(1)参加型ワークショップを効果的に展開させるためのファシリテーターの技法の工夫、(2)評価方法の構築、(3)ワークショップに用いる時間の設定の3点が浮かび上がった。
- 2007-02-28
著者
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